自治体組織

診療所勤務初日、消防の袢纏、帽子、手ぬぐいをいただいた記憶がある。名札より最初に渡されたので大変驚いた。事務長の解説だと「くらいの高い」星マークとの事だっだ。

 

総合防災訓練は毎年大がかりなものであった。「トリアージ」も今でこそ一般化したが、まだ普及されておらず、何かの会で隣席された大学病院の救急科の教授に申し出て、トリアージの資料や赤・黄・緑のタグを数枚分けて頂いた。みなで勉強し、お手製のタグを複製した。

 

総合防災訓練を控えて自治体首長に計画書を提出した。タイトルは「はじめに命ありき」。中学校の校庭に到着する防災ヘリコプターに救急車でトリアージした負傷者を搬送するというシナリオだった。

 

消防団、地域住民、NTTその他関連企業沢山の人の視線を感じながらダミー人形をストレッチャーで運び、ヘリへ乗せた。プロペラの音が大きくて会話ができない状況で使用される手信号が解らずにもどかしかった。

 

見学者が「感動で涙が出たけれど、実際ヘリコプターが見えてこちらから手を振っても乗務員は発見できないよな」と冷静だった。

 

診療所を24時間オープンにしてほしいという住民の希望は少なくなかった。診療所にどんな機能を求めるのかでオープンの仕方にもさまざまな準備が必要になってくる。人件費は膨大になるし、スタッフの安全の確保もまた頭の痛い問題であった。しかし問題提起しても、それに対する開設者の答えは的を得ていなかった。電子カルテ化したときは国道の下を通る国土交通省の光ファイバーを無償で貸してくれるとの事だったので、県立病院でもこちらのカルテや患者情報を閲覧できるようにしてほしいと申し出たが、県立病院側で「メリットがない」と相手にされなかった。そして今はチャットの時代である。

 

安心のカタチと値段。

 

自治体病院の累積赤字はいつも問題になる。医師の確保も市町村まかせ。住民も診療所をもっと機能的にしたいという希望もなく、自家用車で近隣の市町村のクリニックを受診する。

 

出来ること出来ないこと。はじめに命ありき、の次に、いのちの営みと維持のために医療そして安心のための医療周辺業務をどのように考えるのか、県立病院、国保系自治体病院はどのようにあるべきなのか?あの時悩んだ事柄がまた次々と思い出される。

 

田老病院で奮闘する青年医師の言葉が懐かしい。「僕をここに踏みとどまらせるのは、情け、ですよ」どうかお体に気を付けて。お手伝いに行きたくても受け入れ体制が整っていないということです。

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