地元紙に掲載された記事はほんの僅か。でもその一字一句に大きな意味があります。
在来作物の活動は山形のアルケチャーノの成功例を見ればわかるように、山形県の取り組みは素晴らしく、また秋田でも秋田県立大学の生物資源学科を中心に、その活動はにわかに活発になっています。在来作物で地元経済を活性化することだけが目的ではありません。在来作物を知ろうとすると、それは食べて生きていく事の根源にたどり着きます。
野菜の種を自家採取して来た農家さんがあっての在来作物。種を購入してしまえば、F1品種を主軸とした交配品種のみ。生物資源はもとに戻ることは無く、失われた遺伝資源はかなりの数に登ると言われています。
岩手県でも「研究会」とまではいかなくても、在来種を取り巻く人々(生産者、在来種をよく知るヒトなどなど)が集まって、在来作物を「美味しい!!」と楽しむひと時があったなら・・・その願いをスローフード岩手がかなえてくれました。
料理人も共通の気持ちになれる方を・・・ミタイミタの水野シェフです。
在来作物の命をいとおしむお心がなければ、私は在来作物をお料理する資格は無いと思います。固い、甘くない、不味い、不ぞろい・・・そんな言葉が一言でも出てきたら、ノーサンキューです。
安家地区を訪れたシェフの姿・・・もう説明は要らないでしょう。
日本大学生物資源学科教授の川手先生がいらしてくださいました。感激です!ずっと岩手の在来作物を調査研究されていました。スローフードいわての名誉会員です。学術的な見地の深さはもちろんの事、在来作物に寄り添う優しい方です。
生物多様性、短かったり、太かったり色が濃かったり薄かったり・・・種というのものはそういうもの。その不ぞろいさが種としての安定につながるという。今の農作物は多収量と均一な味と外観、工業製品を作るような種の設計になっていて、残念、いえつよい不安すら覚えます。
スローフードジャパンのアルカ活動の中心人物、黒川さんも参加してくださいました。ご縁、有り難いです。
遠野カブと烏骨鶏を手配してくださった遠野市のシニア野菜ソムリエ高橋さん。遠野市の農業はこの方にかかっています。
さてさてお料理の数々。
安家地大根と遠野カブの色どり豆サラダ。
それから安家地大根のロースト冷菜仕立て。オリーブオイルと岩塩でいただきます。シンプルなのに驚きの美味しさです。
畑の安家地大根(9月の写真)。
そしてスペイン料理らしいひと品
烏骨鶏のトルティージャ
石川早生丸(さといも)のパタタスブラバス
この里芋生産者、田村さん。頼もしい存在です。
4種の豆煮込み
安家地区の在来作物には豆も豊富
料理前の短角牛
短角牛の肩ロースソテー・焼き野菜を添えて
安家地大根、遠野カブのソテーと遠野カブのおろし、そしてワサビ漬けも。
雑穀パエジャ。さらに磨きがかかったメニュー。素晴らしいの一言です。
多田農場のモッツアレラ・すたれ豆のクッキー。この会のために多田農場から。
どうしても食べたかったすたれ豆。お願いしてメニューに。クッキーで素朴な味わいです。
こうして手のひらにのっけて、9月上旬に訪れたときの畑の様子を思い浮かべるのでした。
生産者、真ヵ口さんの手。繋げるのは人の手です。
シェフにお願いしたのは、このスペイン料理のレストランが岩泉の町にあったなら・・・。スペイン料理の技術を駆使して地元の食材を素直に盛り込んでください、とお話していました。そのほとばしる気持ちを両手ですくうように、お料理に表現してくださいました。
ともかく笑顔、笑顔、笑顔それだけで嬉しい私。在来種は生産される場所とヒトが重要。ひとり歩きしないことが大前提なのです。
だから安家地大根保存会代表の嘉村さんを中心とした安家地区の方々をこれからも応援したいと思っています。
参加してくださった酪農家の八重樫さん。岩手のスローフードのキーパーソンになると直感しています。詳しくは後ほど・・・素敵な物語は続きます。
参加してくださいました全ての方に、水野シェフに心より感謝申し上げます。