食材(特に野菜)のもっているチカラ(栄養価、フィトケミカル、味わい)を重視した食事を考えますが、それは食品成分表には掲載されておらず、人の感性による判断が大事になります。
品質と健康への寄与を説明し、岩手の食材を実際味わっていただく会を開催しました。
昼の部:東京南青山薬膳中華エッセンス・藪崎シェフは農水省マスター料理人です。
講義時間が30分と限られていて充分な内容を伝え切れませんでしたが、植物を頂く事の大切さ、そしてその品質により味も異なる事を体感していただけるだけでも今回は十分と思いました。アンケート結果を踏まえさらによりよいものにしていきたいと思っています。参加者の方々には心から感謝です。
まずは感性をくすぐる刺激的な野菜・山菜・ハーブの試食から。
浅葱、ふきのとう、花わさび、ルッコラ、セルバチカ、コリアンダー
そして素晴らしいお料理の数々・チカラのある岩手の食材が薬膳で美食へ変化します。野菜か機能性野菜か薬草か?体内では?講義で解説しています。カロリーと塩分だけにとらわれた食事治療は決してよい結果を残しません。
田野畑産合鴨の広東風ダック:藪崎シェフだからこそ出来る味わい(幼少期過ごした場所で飼育された合鴨だと思うと感慨深いのです)。
ボウフウ入り薬膳スープ。これまた薬膳料理の真髄。この日だけのスペシャルメニューです。
環境や食事、ライフスタイルによっては健康を害している事実。岩手に大自然クリニック(森の診療所)があり、周辺に食材の生産現場があり、東京に住んでいても都内と岩手に二つのかかり付け医がいて、いのちを養う食材の調達といのちを整える場所(診療所)がある。その交流が、高齢化社会・地方の人口減少・東京への一極集中の様々な問題解決に繋がることになると考えています。
夜の部は次回のブログで・・
守れ!生物多様性と味わう力
と題して1月24日土曜日、学習院女子大学にて開催されました。
基調講演は味わい教育(品川明先生)、生物多様性(川手先生)
講演は「生物多様性農業の中での野菜作り」長崎の岩崎政利さん
WSの一つとしてアルカ大根と在来種のほうれん草を山形SF副会長岡田先生と担当しました。
大根もほうれん草も品種や旬も画一化され個性のないものに。岩手県の安家時大根、山形県の花作り大根、ほうれん草は山形の赤根ほうれん草、比較のために寒じめほうれん草を紹介(講義・試食)しました。
鉄人料理人・伊藤シェフから南部鉄器を借用。これでグリルすると大根の味がまろやかになります。参加者に、おろし・生・グリル、それぞれ味わってもらいました。
サプライズは秋田県の松館しぼり大根。若者が悶える姿に、うふふっ。
分科会では川手先生をコーディネーターに医農連携のお話を少しさせていただきました。
会場ではArkの野菜や商品が販売
終了後の懇親会、個性あふれる生き方の素晴らしい方々と。色々励まされます。
長崎の岩崎さんの野菜は、それはそれは素直な味。畑が見たくなりました。
領域が異なる私を明るく受け入れてくださる皆さんに心から感謝です。
いのちを耕すお台所~医食農連携で生涯秋田美人~と題して講演させていただきました。
[講演内容] 秋田県農山漁村生活研究会グループ協議会50周年を迎えられましたこと、こころよりお祝い申し上げます。生きてきた時代をふりかえりますと、日本も世界もそして食環境も大きくかわりましたが、それでも働いて食べていく・生きていく事は普遍的で、いっそう大切な時代になってきたと思います。 高度経済成長の数十年間、私たちは物事の本質や正義を判断し問題解決をしていくことを怠り続け、美しい自然環境、美味しい食、健全なこころと体を見失ってしまいました。気がつけば人口は減りはじめ、北東北の高齢化率は類をみません。 農家さんの高齢化も、強い農業の側面から問題視されがちですが、長い経験をもとに生産された農産物は品質が高く、地域の伝統食・発酵食品の製造現場、農家レストランなどで元気に働くシニア世代を沢山みうけます。 「生涯秋田美人」のためには健康長寿が必須です。加齢に伴い高血圧症や糖尿病、骨粗鬆症、関節疾患、認知症、がんなどの疾病も増加します。ただし治療中の疾患の有無に関わらず、加齢の下りのカーブを緩やかにすることは有益で、内服薬を減らす事やピンピンコロリの達成にもつながります。なかでも毎日の食事は特に大切です。保険診療で実施される食事指導のほとんどは、カロリーや塩分など食品成分表の数値をもとに行われています。これですと輸入食材でも加工食品でも、数値があえば治療食、予防食です。一方、抗加齢医学では、抗酸化、抗糖化、脂質バランス、腸内環境から食をとらえています。すなわち野菜果物のフィトケミカル、まるごと頂く未精製穀類、ω-3脂肪酸、発酵食品や食物繊維豊富な食材を抗加齢食として推奨しています。これに匹敵するのが、新鮮な野菜果物、魚、健全に飼育された畜産物、豆類、味噌などの発酵食品、まさに秋田県の農水産物です。フィトケミカルは植物性食品の味、香り、色に関わる成分で、収穫後ただちに減衰していきますから、地産地消の食生活は疾病予防や抗加齢にアドバンテージであるのです。特に腸内環境のよしあしによる老化促進や疾病とのかかわりの研究がすすむにつれ、自然に近い食品をいただく事の重要性が再認識されています。これは加工食品や出来合いの食では実現できません。良い作物が育つために良い土壌にすることと同様、よい腸内環境のみなもとは「いのちを耕すお台所」にあるのです。冬期間の保存食に塩分が多くなることはいたしかたありませんが、くふう次第で解決は充分可能です。 資料2は医食農連携の概要図です。生産現場・食産業・医療福祉それぞれの距離が縮まることの大きなメリットと、そしてその中心は食を準備する「お台所」であることを強調いたします。医療が食への理解や関わりを強くしていく事がこれからの課題です。 秋田県のキャッチコピーは「ユタカな国へあきたびじょん」、岩手県は「黄金の国いわて」、宮城県は「美味し国」と共通の理念、つまり「生産し食べて幸せに生きていく事」です。高齢化社会において多くの方が社会保障費に頼らず、生き生きと働く社会にその理想郷があります。東京オリンピックの開催が決まり、伝統的日本食文化や農山魚村の景観に、食産業や観光業界が注目してきました。経済活動の方向を舵きりし、美しい日本、美味しい食、健全なこころと身体という大きな遺産を、次世代に残せることを願っています。
会場300名の方々は生産し食品加工し家族とともに地域で暮らす方々。会場と一体になったかのような講演。貴重な経験をさせていただきました。
秋田県の伝統を継承していくキーパーソンと岩手の在来作物を手にしての記念撮影。北東北の手つかずの自然や中山間地帯の景観、温泉、人々、伝統食・・・・観光へと発展させて高齢化社会をむしろ享受して美しい日本を後世にこのしたいと思います。