HP開設者:Dr.Miyataはこのたび日本ベジタブル・フルーツマイスター協会認定のベジタブル&フルーツマイスター検定に合格しました。
なぜ医師が野菜ソムリエに?皆さん不思議に思われるかもしれません。
それは中学の頃に遡りますが、社会科の副読本に見た「ガーナの子供たちはチョコレートが食べられないのです」の項目でした。
当時のチョコといえばロッテの真っ赤なパッケージのガーナチョコ。おやつのトップ3でしたから、私としてはかなり切ない気持ちでした。
その後日本は世界中から買い集めた食材で溢れ、食生活も激変してしまいました。医療現場で診る患者さんたちにも年単位で変化が起きています。「食生活の欧米化に伴い・・・・」のフレーズは生活習慣病の解説のイントロダクションによく使われます。
日本人はもともと野菜を中心とした食で生きてきた民族。1日に3回体に入れる食事は、体そのものを構成するのですから、食生活の変化が体の変化になる事は納得していただけるかと思います。
イタリアで自国の食産業を支援している、ある美食家の言葉が忘れられません。「朝からはいているベルサーチのパンツは私の体にまとわりついているだけだが、今こうして食べる紫色のぶどうは直ちに自分の体の一部になる」
生活習慣病は自分が主治医と言っても過言ではありません。しかし、人間は安易で楽しい事にしか気持ちは向かないものです。
痛くも苦しくもない状況では、医師がどんなに熱意をこめて病状を説明しても、自分の生活を変える努力まで到達しない方も多いのです。
制限ばかりの生活習慣病の患者指導のなかで、もっと食べましょうと推奨できるのが野菜です。
スーパーにならぶ画一的な野菜の味のイメージしか浸透していないことが残念ですが、美味しい野菜は探せば必ずあります。その魅力を伝えるのがマイスターの仕事です。
収穫後でも野菜は生きて呼吸をしています。その野菜たちから生きることを感じ取り、野菜を食べて、野菜のような美しい体を作り上げて欲しいのです。
それは医師の仕事か?もちろん答えはイエスです。
予防医学も医師の仕事。薬を処方する前の段階で、野菜を処方してあげたい方はたくさんいます。
気がつけば日本の食料自給率は40%。しかし米は95%、野菜 80%の自給率はまだ保たれています。
輸入された食材で健康を損ねてはいけません。寝たきりになって経管栄養として流し込まれるものは、ほとんどが外国から輸入されている食材が成分です。中学の頃みた社会科の副読本のフレーズが頭をよぎり、また複雑な思いになります。
自分はチーム医療(看護師・栄養士・運動療法士らと共に実践する医療)のなかで、野菜の魅力を語るだけなのですが、それが今の日本の食料安全保障や農業問題、その先の世界の食料事情まで考えてくださるきっかけになればという思いだけです。
壮大なテーマの前で、自分は微力ですが情熱だけは持ち続けたいと思っています。
次回から岩手県の野菜・果物レポートを掲載予定です。