美食の医食農連携「岩手の山葡萄」編。
自分のシニア野菜ソムリエ人生の歩みを振り返る感慨深い会となりました。
事実その1:岩手県の地質は周囲の県よりはるかに古くカンブリア紀それ以前にさかなぼる。その大地に自生する山葡萄はその地質でのびやかに育ち、味わいも栄養性・機能性にもすぐれたいわば「薬」である。幼少期口にした山葡萄は子供にはすっぱ苦かったけど、食が細く貧血の祖母は大事に搾り汁を保管していた。
事実その2:地域興し的な発想から岩手の特産にしようと行政と研究機関は「交配種」を育成し、感性ゼロのまま農家さんにばらまいた。しかしその交配種は単なる「ブドウ」の性質と味わいのチカラしか持たず、もちろんポリフェノール量なども本来の山葡萄のような産生能力をもっていない(検査済み)。収量があがると売り先に困る。横並びの6次産業がいくつもつくられたがヒットせず、創り方を間違えた山葡萄ワインにもしらけムード一杯。かくして農家さんは生産をやめていった。
事実その3:そのなかでも交配種ではない山葡萄を大事に選抜し生産している奇特農家さんがいらした。成分分析をかけても素晴らしい数値。検査結果をみて涙が出た。行政や研究者は大事なものを踏みつぶしてきた。
事実その4:岩手県の地質とそこで自生してきた山葡萄は岩手県の宝物、世界で唯一とソムリエの松田氏は語る。県内の地質を示す石と山葡萄のテロワール・味わい(野生種・交配種)、感性と知性の際立つ素晴らしいプロのお仕事。
そして岩手のベリーの第一人者、工藤氏の説明は山葡萄の歩んできた道のりを淡々と説明する。地道な専門性の高いお仕事。岩手の山葡萄を守り抜くにはこの方のお力が必要です。
事実その5:今日の会、行政の担当者に参加を再三再四お誘いしたが、誰一人として反応するものはいなかった。 あとはわかる人だけで世界を創ります。
今日のお料理はモンフレーブ狩野シェフに「フランスの片田舎をひとり旅してふと目に留まった、地元の人々に愛されにぎわう素朴なレストランの素朴なお料理」とお願いしました。とても染み入る料理人の愛がこもった美味しい料理でした。
最後に、野生の山葡萄を自己選抜して大事に大事に守り抜いてきた山葡萄畑が、三陸復興道路の下敷きになりました。ああ、もう失いたくないです