野菜王

寒締めほうれん草の真実:仙台イベント報告

毎年開催している寒じめほうれん草イベントですが、今年は野菜ソムリエ協会15周年ということもあり、日本野菜ソムリエ協会仙台支社の主催で実施できました。

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ほうれん草は冬が旬。ほうれん草はもともと日本に存在していたのが東洋種。それが西洋種とのかけあわせが進みに進んで、どれが本来のほうれん草の味か見失ってしまったのも事実です。

 

そしてこの時期のもう一つの問題「栽培方法、栽培地域の違い」です。

 

寒締め栽培はほうれん草に限らず、冬期間の葉野菜の栽培に活用されています。

 

ほうれん草の強い性質は、この寒締め栽培で底力を発揮します。ハウスの中で一定期間成長させ、その後、ハウスの窓を開放して外気をあてる。約1か月間、ほうれん草は葉っぱの中に糖を蓄え、そのラジエータ機能により生きながらえる。寒さのストレスによりフラボノイドやビタミンCなどの抗酸化物質は増加する。一方で硝酸体窒素は低下するものが多いという。寒いからこその貴重なほうれん草が出来上がる。

 

しかし雪の降らない地域での「縮みほうれん草」は外見からは寒締め栽培ほうれん草とは区別がつかず、価格面で差をつけにくい。農家さんがハウスの周囲の雪かきを一生懸命行い、栄養価も味も抜群のほうれん草が、差別化をできない。まあ、何度も強調してきたものの、流通業界で差別化の努力をする人がいないのが残念である。

 

そういったバックグラウンドを知ったうえで、ほうれん草を食べ比べてもらいました。

1. 北海道名寄市の星空雪見ほうれん草(ハウス栽培)

2. 岩手県久慈市寒じめほうれん草

3. 山形県赤根ほうれん草(東洋種・在来種)

4. 宮城県矢本地区縮みほうれん草(寒締め栽培発祥の地域ですが露地栽培)

5. 群馬県縮みほうれん草

 

甘さ、コク、うま味、ミネラル感、心地よい苦み、エグミ

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バランスが取れているのか?ただ単に甘いだけ?旨みやコクが後味としてかんじられるほうれん草・・・などなど、参加者の感想もさまざま。特に最近の傾向、甘い野菜がもてはやされる事。しかし、ほうれん草の醍醐味は心地よい苦みでもあります。そして、この苦味こそがほうれん草フラボノイド。歓迎すべき味覚です。しかしその苦みを美味しいと感じない人も結構多いのです。

 

どれも申し分ないほうれん草でした。それでも宮城県矢本町のほうれん草は素晴らしかったですね。産地も大事ですが、農家さんの実力を反映した野菜に出会うためには個人の努力が必要なのです。

 

そして私の世界、ほうれん草はどれだけ健康に寄与するか?栄養価、機能性、そして未だ決着をみない硝酸体窒素について解説を加えました。

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仙台市トラットリア・カンパーニオ、本日のお料理はこちら。塩味抑え気味に、とお願しました。とてもバランスの良いメニュー仕立てでした。

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色々な作物があること、それは農家さんあっての美味しさ。感謝しかありません。

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参加してくださいました方々との交流も貴重で楽しかったです。みやぎ食育アドバイザーをして10年近くなりますが、すべての出来事は無駄でなくこうして未来へとつながっていくのだと、再認識いたしました。

 

機会を頂きました日本野菜ソムリエ協会仙台支社の遠藤マネージャー、そしてほうれん草を手配してくださいました各地の野菜ソムリエの方々に心から感謝申し上げます。

 

いわて山葡萄テロワール in 大阪 開催しました。

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山葡萄の味わいと岩手の食材を大阪の方々に楽しんでいただく会を大阪市の欧来食堂TANAKA様で開催いたしました。

ふるい大地とそこに根付いた山葡萄、自生する山葡萄を選抜し優品に育て上げた農家さんの努力。大地と太陽と味わいがそのまま反映された山葡萄原液・ワインを合計7種類飲み比べていただきました。

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アルコール度数8%12%の違い、醸造所による違い、その存在は偶然か奇跡か?

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今日限りの特性メニューはオーナーシェフの田中氏のお料理。欧来食堂TANAKAは野菜ソムリエ協会認定レストランです。

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前菜:ローストした安家地大根とビタミン大根、かぼちゃのソースとベビーリーフがとてもヘルシー。色々な野菜の素材が生きています。

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イモダンス(岩手県田野畑村の伝統食材)の粉をニョッキにし、三陸の鮭、ワカメと。クリームやチーズを用いず、それぞれの旨みがイモダンスの渋苦さをまろやかに包み、食べたときの口腔内の味の広がり!これはシェフお見事です。

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わらさのパン粉とチーズ粉をまぶして焼いたものにアズキをまぜたリゾットを添えて。たんぱくな味のわらさにカリッと感が加わり、そのままだと素朴さで終わってしまう素材が料理技術で格段にハイセンスに仕上がっています。

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短角牛の山葡萄ソース添え

不思議ですね。同じ構成でもお料理するシェフにより風合いが異なります。今回も短角牛のしっかりしたお肉のうまみが噛むごとにソースとのハーモニーを奏でていました。

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岩手県湯田のヨーグルト、岩手のリンゴ、そして栃のはちみつを使用したデザート。岩手の大地の豊かさをそのまま生かしたスイーツで終了。

 

シェフは昨年、岩手の食材を使用したイベントを開催してから、何度か岩手の食材を取り寄せて使用してくださっていたとか。岩手の食材の特徴を知るようになって、今回もメニューへの応用が深まったとお話ししてくださいました。

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会場のご意見、ワインの好みはばらつきがありました。意外や意外「たのはた山葡萄ワイン」が一番人気でした。

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岩手QMの中心人物、Olahonoの渡邉さん。手にしているのは安家地大根。台風10号の被害で収穫後の流通が危機的になりそうな時、偶然か必然か?岩泉を通りがかり惨状を見聞き、渡邉さんが知人と共同で流通の支援を申し出ました。今期は無事に農家さんの収入に役立ったものと思います。彼女の行動力と実績はいつも頭が下がります。

現在、野田村の涼海の丘ワイナリーが稼働中。またまた話題が出てきましたいわて山葡萄。これからもぞれぞれの商品の特徴をきっちり評価して、ファンの好みを反映したご提案をしていきたいと思います。

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参加して下さいました皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

益荒男ほうれん草

品種名ではなくブランド名です。農業研究者は当たり前ですが農作物を作るのが上手。

ただし環境に左右されない圃場にかぎります。

 

農業というのは「生業」ですから、生産して販売する(流通にのせる)という、「野菜づくりが上手」なだけでは成り立たない勝負師であり職人の側面があるのです。

 

JAの言いなりになると無駄な労力を使い利用されることも多々。気づいたら借入金で塞ぎがちな人生、ということも・・。

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しかしこのヒトは違うなぁ。ジャパン・アグロノミスツ株式会社、藤原隆広さん。国家公務員、研究者としても沢山の業績をのこし、今、農業人。いや農業経営者か。

http://www.jagrons.com/index.html

野菜の特性と知り尽くしていて、同じ種でもこのヒトが生産するのが益荒男ほうれん草。根に着眼した栽培。人間でいえば腸管機能。根も腸管も都合の良い成分だけを吸い上げるわけではない。そこに高い研究があるのだろうなぁ。

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さて、送っていただきました。すごい、動き出しそうです。「益荒男」のようなほうれん草です。

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茹でてもかさが減りません。緻密なほうれん草なのです。甘さとほろ苦さ(渋苦くありません)がしっかりあって食べ応え充分なほうれん草です。(味は寒じめほうれん草にはかなわないけど・・・。)